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新建築住宅特集 2012年12月号に寄稿いたしました。 2012/12 

地域性への眼差し
この地域には雪に代表される厳しい自然と、日
本有数の稲作地という農業があり、それらはか
つて街のつくりや人びとの営みに現れていた。し
かしこうした〈地域性〉は、近代化の中で克服す
べき対象とされ、逆にその仕組みを備えたもの
こそを「地域的な建築」と呼んできた。今も昔か
らの〈地域性〉をマイナスととらえ、消し去ろうと
する力を重力のように感じる。地域性を普遍的
な価値で計り、評価しようとする発想も生まれた
のだが、こうした重力を合理的に打ち消すまで
には至っていない。
そんな中、「地域」を深くとらえる一部の愛好者
が、本来あった〈地域性〉を多様に描き出してい
く姿に可能性を感じている。建築もそうした活動
を表象することで、地域性を再編し、その領域
を広げていくと考える。冬荒れる日本海に面した
海の家、農家の納屋の上につくられた家、雪降
ろしを楽しめる家など、地域を深く知り、関わっ
ていこうとする人びとの視点が見つけた価値が
新しい建築を生み出していくのではないか。